Laundry Land

いよいよ就活生。

40歳のオードリー若林にワクワクする。

『オードリーのオールナイトニッポン』18/11/17放送回。

今年のM-1グランプリ決勝進出者が発表され、唯一の"非吉本"として事務所の後輩であるトム・ブラウンが勝ち進んだことを祝福する話から始まったオープニングトークは、08年にオードリーが敗者復活から勝ち上がり、ズレ漫才ブームを世間に"ぶちかました"日のことを振り返る。

「キャラ漫才は通らない」という噂が流れていた敗者復活戦、諦めていた若林は原付で会場入りしていた。だから、奇跡的にオードリーが"時の人"に躍り出たその日、決勝の舞台を終えた彼は誰もいない深夜の敗者復活戦会場に原付を取りに戻ったという。その、テレ朝から大井町競馬場までのタクシー代1万円を春日に借りたのだ。

普通だと、返しなさいよ。というくだりの始まりである。

春日「未だに返ってきてないけどねえ」

若林「今返そうか?(財布から取り出して)返します。ありがとうね」

リトルトゥースは若林のこの感じを知っている。でも、(岡村隆史の言う)お笑いの教科書を見れば、このやり方は間違いであると書かれていたはずだ。


春日「そうじゃないじゃない。そりゃ言うけどさ、返さなくていいじゃない。返せよ、とは言うけど、何かワケ分からない理由つけて、もういいわ、みたいな」

若林「それ、何なの? 10年前は、ネタ作ってんの俺だから、みたいなこと言ってたかもしれないけど、もう40になって思うのは、いくら相方と言えどそういうとこちゃんとしないとヒビ入ってくるよ。30の芸人が話のネタとしてやるのはいいけど、この歳になってくると、そういうのはちゃんとした上でお笑い作った方がいいじゃない。だから、これ。ありがとね」

春日「いや違うじゃない。大人になるなよ」何やってんだよ。大人になるな」

若林「何それ?」

春日「別に返してほしかないんだよ!そういうつもりで言ったんじゃないの。そのくだりがあるから、で、表に出ろ。でいいじゃない」

若林「これはでも、もうダメだよ春日。リスナー聞いちゃってるから。これで1年後とかにまた返せよとか言ったら、あれ?ってなるじゃん。これはもう俺が返す風にしちゃったから」「何なのこれ?創作落語?饅頭怖いの逆みたいなこと?」「どうする、じゃあ五千円ずつにする?」

春日「いやいいのよ、返すなよ!返すなよ!借りたモノを返すな!」

若林「いやそんな世界あるの? でもあれだろ、あの時の一万の価値は今の一万と違うって話だろ?」「じゃあ、二(万円)で」

春日「つけるなよ!価値を返すなよ」

若林「じゃあ今はいいのね?むずかしいね。返さないほうがいいという世界なんだなあ。その辺ちゃんとしときたいけどね、40になったら」

春日「いいのよ、歳なんて。60、80になっても返せって話した方がいいのよ。それができなくなるから。それはもう、財産なのよオードリーの」

若林「一万円以上の価値があるの?」

春日「価値ある価値ある。一万円もらって、終わりにしたくないのよこんなの」

若林「いくらくらいの価値あるの?時価にして」

春日「それはもう、、三万くらいの価値でしょ」

若林「あ、じゃあ、三万返せばいいんだよね?(財布)」

春日「それはもういいよ!」

若林「わかった。勉強になった」

春日「たのむね」


だいぶつまみましたが、10分くらいこのやり取りは続いた。

くだりの正解を知るリスナー側にいる春日に対して、一万、五千、二万、三万と0以外の数字を提示していく若林。お前はごく当たり前のお笑いのくだりを理解してない風に俺を言うけど、普通に生活する人間の生理に従うのなら、そのお笑いというのは難しいね。と言うのだ。

手の内を明かさないかっこよさが昔はあったかもしれないけど、今は誰でも基本のルールを知っている。じゃあ別の方向で裏切るポイントを作らないと、それはただの様式美を示すだけのものになってしまう。それは意味があるのか?ラジオの若林からはそんなモヤモヤしたものを感じる。電話のガチャ切りや、ann週またぎ企画、宣伝事項の多さ、番組の情報解禁を気にする意味など、リスナーに関係ない、業界の通例をなぞる縛りに堂々とヘイトを口にする若林が好きだ。

 

金返せ!のくだり。バナナマン設楽と有吉の間にまったく同じものがある。昔ソープ代で貸した一万円を返してくれ、という話は有吉がバナナムーンに出演するたびに掴みとして出てくる。

お手本のような例だ。大物同士になった二人の関係性が、寝かせ続けたこの話に価値を発生させている。

さんまと紳助の間にもこんな話ゴロゴロある。ということは、お笑いの教科書に太字で書かれている。でも、その本はもしかしたら、というか多分、ボロボロになっているはずだ。


テレビの画面で見る若林は、最近若手層から中堅層に繰り上がってきたのかな?という印象だと思う。少しずつMC仕事の番組も目立ってきている。

ただオードリーは、相方のビジュアル的な変化の無さと、厚すぎるお笑い第三世代いわゆるアラフィフ中堅層のせいで、未だ若手のプレイヤーイメージを持たれていても不思議はない。永遠のプレイヤー側であり、最強スター春日に対し、"若手"としての若林は窮屈そうだった。ガールズバーに通いすぎて人見知り芸人を克服してしまった。というエピソードで払いのけられるほど、若林のそういった印象は薄くなかった。

40歳になった。テレビ、書籍、人物像。彼に対する理解が浸透してきた上に、今の世間は感覚的に若林を求めているように感じる。裏切りきれてない様式にもう価値を感じる方が難しい。

『ぱなおきゃとりーのもろもろのハナシ』を見たとき、オードリーはこのライン(華と実力を兼ねる、完成した東京芸人)にいるのかもしれないと思った。だけど多分違う。いつかこのラインに来るのかもしれないけど、当分はあのスタイルをなぞることは無いはずだ。若林には、ラジオで40歳という年齢をよく口にるようになってからずっと、破壊衝動を感じる。バナナマンおぎやはぎのスタイルは確かにかっこいい。だけど、若林はまだテレビにそのスタンスを持ち込み始めたばかりだ。


***


オープニングを終えた後の若林のエピソードトークは、千鳥・佐久間P・加地Pとの食事会の話。(本人も「何か起こりそうなメンツ」と言っていたが、中身はそうでもなかったというオチだった)

感動した。『帰ろか、千鳥』からすぐ、プレイヤーとMCの両刀を確立した千鳥の代表フレーズ「どういうお笑い?」は、"借りたものを返しちゃう" というオープニングトークにまさに呼応しているじゃないか!!

同世代の2組の、まだまだこれからだ感にワクワクする。この層までカメラが降りてきたなら、出てくるお笑いも変わるのではないか。そうしたら、初めての変化になるんじゃないか。

テレビから離れている視聴者は、ボロボロの教科書をただの様式美として、大切には扱っていないような気がする。

(ボロボロの教科書を使った授業は、毎週ヤンタン土曜日にその著者がアイドル達に行っている)

斯々然々(10/15〜10/31)

取捨選択、四捨五入を繰り返しすだけの充実感。モヤモヤの粒々に沸々と向き合う達成感。吉か凶かは賽の目次第でも、君が今日何を考えるかは足止めしない。とりあえず、学生なんて暇な商売だし、智に働けば、情に棹させば、意地を通せば、とかくに人の世はなんとやら。

考えないといけないことが1000個もある!こんなのもう嫌だ!机から銃を引っ張り出してこめかみに当てたところでザッカーバーグは思い立った。悩みを紙に書き出してみると、どうやっても70個しか出てこなかった。70個が頭の中を15周ぐるぐるしていると1000個に感じるわけで、そのストレスは自分に向けた引鉄をも引かせてしまう。実際は70個なのに。

決断を繰り返すことも、考え続けることも、それ自体が美徳とは思えない。どういうスタンスが自分に合っているかも考えないで、本当は必要なことを切り捨ててしまったり、同じところで止まったままだったりするのは、もったいない。ノイローゼの猿、即ち人類。僕らのこと。

 

***

 

現代において必要不可欠な娯楽は何かと聞かれたらなんと答えますか。

「娯楽なんていくらでもあるんだから、落語なんてなくていい商売なんだ。それを、悟られるんじゃねえぞ」先代三遊亭圓楽のこの言葉。"悟られるな" というところがミソだ。娯楽は理屈だけでどうにかできないものがあっる。そしてそれを出す人には騙せるだけの技術がある。

娯楽なんて本来いらないんだ。なんて言う、悟り世代?ふざけろ。もっと頭を使わなきゃいけないし、使っている。芸人には技術、客は目を肥やさなきゃいけない。パン屋は美味しいパンを焼かなきゃいけない。

「視聴者には分からない、というのは視聴者を馬鹿にしているよね。分からないけど面白い。分からないから興味を持つ」タモリもずっと同じことを言っている。

テレビ塔が"娯楽の英知を結集した存在"だなんて今更誰も思ってない。一つずつの"瞬間"に照準を合わせたものが多すぎる。番組、広告、ニュース。おおきな流れを意識しなければ住みやすい。でも、テレ朝が視聴率であの日テレを上回った。誰がテレビを見ていたのか、一発でわかる。


***

 

藤田貴大『おんなのこはもりのなか』このなかの『20代の「いつか」について』という一編が心に溜まった。本当に良かったし長いから、ここには載せられない。

(メインは「うでの毛をさわさわしたい」「充血した目に点眼したい」「口内炎を舌で確かめたい」「なんで性交はしたいのに、鼻水は吸えないの?」といったド変態エッセイ。「ぼくがじっくりあたためて作ったスープが、役者さん、いや、女優さん、いや、女子のからだのなかに流しこまれる」なんて。すごいんだ、このピュアさ)

おんなのこはもりのなか

おんなのこはもりのなか

 

20代である僕らが思う「いつか」っていうのはいつなんだろう。どれくらいのペースで歩いて然るべきなんだろう。

"いつか歩いたこの道が、いつか懐かしくなるだろう" という斉藤和義の唄もそうだけど.「いつか」は誰にでもあるだろうし、誰も持ち合わせていないもので、秒速五センチメートルなんかを見るとそんなことがチラチラする。「いつか」を見据えるだけじゃ、その「いつか」は来ないし。今も過去から見たら「いつか」だし。それを顧みようとしないのは、いつだって今が「いつか」に繋がると思い込んでいるからで、それは別に「いつか」に対して前向きなんかじゃない。

何に腹が立つかで、だいたいの器の大きさは測れるとも思えませんか。「いつか」というハードルをある程度設定しておかないと、一度立ち止まってしまった時に余計なものにまで意味を考えてしまうと改めて思う。池袋の公園のベンチにこんなことを書き捨てた人は、どんな「いつか」が見えているのかしら。

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俺もイライラすると、なぜ道路のアスファルトはこんなにも黒いのかにも腹がたって、スガシカオもピコ太郎に見えてくる。

真夜中の虹。雨が降ると広場の銅像は涙を流す。ずっと同じポーズで、ずっと同じ道を見下ろして。部屋を出ても電波は人を追いかけるけど、彼を見下ろす時計の針はしばらく前から自分の時間軸を採用したらしい。黒いアスファルトが少し柔らかくなる時間に缶チューハイを飲みながら歩く。「いつか」への最適な速度。お前が7時25分だって言うならきっとそうなんだ。そんなもんだ。真夜中の2時。

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***


白い部屋。面接会場に18人。囲まれた気持ち悪さがとても気持ち悪かった。

興味、関心、尊敬、愛情なんかが循環するサラサラした液体に少しずつ沈殿していくのは尊厳、軽蔑、屈辱、卑下なんかで。沈殿したそいつらをコンクリートと混ぜて固めたビルは大きく、屋上にヘリポートまである。

たった1時間の付き合いの18人がもうすでに俺は嫌いになっていて、この人たちとあとどれくらいの時間を過ごすかだけを想像する。その日の朝に引っ張り出してきた腕時計の針が止まっていたから。大丈夫、なんの問題もない。時計の針が進まない俺があの部屋にいる誰よりも自由だった。酒が飲みたかった。真っ黒いアスファルトよりも硬い絨毯を歩いて、適当に喋って帰った。


***


ノートカバーを新調した。2冊収納できる。これで引鉄を引かなくて済むかもしれない。

・自己中でいることが自己治癒なら、ニコ中もニコ治癒だし、まさかも真っ逆さま。

・ピースの箱にピースは10本しか入らないから、11本目のピースには入るべき箱がない。でも人間はピースではない。

・「喋ってる途中から自己嫌悪に陥らないようにして頂いて。そんなタケシさんの熱い気持ちがあったせいか東京で桜が開花しまして。」さすが安住紳一郎ビートたけし独立報道後初めての情報7days、生放送冒頭から仕掛けてくるたけしをかわし続けて収めた安住アナに感動する。

・桜の蕾は完全に開ききり、とんねるずの30年は幕を下ろした。官邸前に人が集まり、ふともも写真展は中止された。

・ダイアンの職務質問ネタの「DVD借りたの?準新作で?」「関係ないやろ」「いや、純晋作。俺の名前やねん」このくだりは、いとしこいしの「君名前は?」「今言うぞ」「早く言いたまえ」「いや、今井雄三」という職務質問ネタと同じだな。


こんなことを書き殴るためにわざわざノートを2冊も持ち歩いているのか俺は。

でも、阿佐ヶ谷に出かけたあの日から、頭がずっとぐるぐるしている。何か出てこないか。何かないか。何かあった気がする。全録、オンデマンド、はち切れるまで。スカスカな自分が怖くて、逆に1000個になってくれとさえ思う。沸々とするものを、放課後のサイダーに溶かして飲んだり、始発の朝焼けに蒸発させたりしない。そんな音楽を聴けなくなった。全部逃さん。全てパロディなのかなんて、作ってから考える。

いや待て。頭に書いたことと全く逆だ。 

取捨選択、四捨五入を繰り返しすだけの充実感。モヤモヤの粒々に沸々と向き合う達成感。吉か凶かは賽の目次第でも、君が今日何を考えるかは足止めしない。とりあえず、学生なんて暇な商売だし、智に働けば、情に棹させば、意地を通せば、とかくに人の世はなんとやら。ノイローゼの猿。

でももう、「SNSで読み書き覚えたゾンビどもの島から自家用ジェットであなたを救出しに参りました」そう言って縄ばしごを降ろしてくれた会員制の遊覧船も、今年いっぱいで土曜深夜の特等席を手放して着陸する。

畜生。ヘリポートになんの意味がある。

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***

メモ

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

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表現の技術 (中公文庫)

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『RELOADING CITY』

街は再読み込み中。ビルはより高く。空は狭く。漠然とした"東京オリンピック"を目指して街は進んでいる。

HOT CV

HOT CV

Hold on to crazy vibes

醒めたまま見る夢。リローディングする街とアップデートできない人間。

ものんくる『RELOADING CITY』ワンマンで見せたライブは素晴らしかった。一曲目の「HOT CV」を中盤でも挟み、いくつもの曲のサビを次々に乗せていくのはまさに読み込み中。読み込んだ後の再スタートをポルノグラフィティの「アポロ」カバーから始めたのが正確だった。

ぼくらの生まれてくるずっとずっと前にこんなアルバムが出ていたんだ、そう振り返ることができるCDだ。でも、今の東京で、再開発や建設中の表示とすれ違いながら暮らすぼくらにとっては、未来にこの経験を証明する音楽だと思う。

夜のヒカリ。工事現場の点滅。ブラックとオレンジのボーダー。巨大なブルドーザーのイエロー。空に突き刺さったようなクレーン車。白く照らされている。立ち入り禁止の網目を指先で触る。(藤田貴大)

東北の映像がひとしきり流れてからすぐ。訳の分からない外国人が開いた封筒をきっかけに、気付いたら東京は一人読み込みを始めた。街全体が一斉に動き始めたらしいが、僕たちの期待は置いてけぼりにして街は工事現場でいっぱいになった。何かが生まれる不思議な気配だけが薄っすらと漂う、読み込み中の街。

 

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渋谷ストリーミングが完成して、オープニングイベントにものんくるが出演した。高校の頃によく歩いた川沿いのあそこ。去年、根元にあった本屋が潰れた、今もバイト帰りに通っていたところ。よく風の通るフェンスの下から見上げても、突き上げるそれがどこまで高いのか見えなかった。

膜で覆われた黒い塊、白い光のライト、剥き出しのクレーン、振動と騒音の数値を知らせる電光掲示板。人の気配のない渋谷の隅を、なんだか月面の景色みたいだと思った。誰の想いも、気配も感じないその景色の写真を使ったフライヤーを作って、企画を打ちたいと去年考えていた。当時の企画名に「Apoloooo!!」と書いてあった。アポロ11号着陸の生放送にみんなが注目した1969年。大阪は翌年の万博に向けて読み込み中だったはずだ。僕らの生まれてくるずっとずっと前から半世紀、今ならアポロはどこを目指すんだろう。一体どれほどの人が、息を呑み、拳を握って、五輪を迎えるんだろう。オリンピックの持つイメージが、どれだけ自分の生活に入り込んでくるのか、未だ掴めないのは何故だ。

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次々と消えていく。人が、建物が、番組が。まるで平成なんてなかったかのように。平成以前に生まれた人間が、平成の後の時代で終える人生を目指して指揮をとる。この時代に生きた証は、この時代に死ぬか、先の時代に賭けるしかない。けどそれは大変そうだから自分は前者をとるよ。大変に失礼だとはわかっているけど、そんな風に感じてしまうのだ。否が応でもこの再読み込みも近いうちに終わる。出来上がった建物の展望台から見る景色よりも、その高さを見上げる自分の想像しかできないのはなんでだろう。

Hold on to crazy vibes

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サグラダファミリアにやっと許可が下りたんだって」

サグラダファミリアってあの、」

「スペインの」

「ああ。え、許可?」

「あれ、建て始めたの136年前らしくてさ、現代目線だと超違法建築なんだって」

「あ、そう。出来上がらないやつの代表みたいなとこあるよな、あれ」

「それがさ、許可下りるじゃん?あと8年でできちゃうんだって」

「まじ?下りた途端だな」

「でもさ、できちゃったらさ、なんかもうサグラダファミリアの意味なくなると思わない?途中なのがいい、みたいなとこあんじゃん、あれ」

「渋谷の駅はさっさと完成して欲しいけどな、あれ。迷う。」

「まあ。でもサグラダファミリアはさ、絶対完成させないべきなんだよ。どうせさ、あれを建ててきた爺さんみたいなのがいてさ、そいつが70くらいでさ、最近腰も痛えし、俺が死ぬまでに完成させるなら今しかないってわがまま言いだしたんじゃないかと思うんだよ、おれ。爺さんみたいなののわがままなんだよ、許せないよ」

「爺さんみたいなのってなんだよ。まあでも、完成させないほうがいいような気はするな、おれも」

サグラダファミリアの一番いいところじゃん、途中なのが。それを無くすんだからさ、完成とは真逆だよね」

「じゃあ、一回さ、出来上がるじゃん。それは、もう決まったんでしょ。できてさ、その70の爺さんみたいなのによかったねってみんなで言ってあげてさ、そのあと全部爆破して壊したらいいじゃん。で、また一から作り始めればいい」

「そんな刑務所の作業みたいなことする?」

「でもさ、やってる途中っていうのがいいとは思うし、作ったら終わりだし。おれらが働いてるこのライブハウスの隣のこれもさあ、別に誰も完成は期待してないんだよ。だからさ、パルコも全部出来上がったら全部ぶっ壊れてくれないかなとは思ってる。」

「ロケットとか、落ちてこないかなあ」

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Hold on to crazy vibes

my vibes

ナッツ

ナッツが食べきれない。毎回間違えてしまう。

チーズ、オリーブ、ソーセージ、グミ、チョコレート、パインとかがある中でなぜか毎回ナッツを頼んでしまうのだけど、必ず失敗する。小分けされた袋の柿ピーくらいの感じで頼むからいけないんだと思う。食べきれないのだ。

 

ドイツ料理屋に入った時。サラダとスープ、シュニッツェル、フラムクーヘン、ケーゼシュペッツェレ、そしてビール。腹が減っていていっぺんにオーダーしたときになぜ、俺はナッツも頼んだのか。ナッツが来る。サラダが来る。この間五分。次々に料理は運ばれてくるのが分かっていながらなぜ。ナッツに手をつける時間はその五分しかない。

そして飯を食いながら、テーブルの隅にほとんど手をつけられていないナッツの器が気になる。一緒に行った彼女はこの日酒を飲めなかったから、実質マイ・ナッツ状態。綺麗な器に盛られているところに余計腹が立った。

 

そしてこの前。ライブの開演時刻まで空いた時間に少し酒でも飲もうと一人で店に入った。ラムソーダにナッツ。器に盛られたマイ・ナッツが運ばれてきたとき、あのドイツ料理の記憶が蘇る。もしやと思ってしばらく。案の定、食べても食べても減らない。店の間接照明は暗く、器にどれだけのナッツが残っているのかもよく見えない。柿ピーでいいと何度も思った。本を読みながら飲みたいだけなのに、気づくとページをめくるよりナッツに手を伸ばすだけの時間になっている。洒落た雰囲気の店にも腹が立ってきた。一つ一つ違うデザインの椅子やソファー、談笑する男女、口髭を生やした気の利く店員の何もかも。何が恵比寿だ。何がカフェ・ラウンジだ。ふざけやがって。客が食い切れる量のナッツも分からない店に何のラグジュアルがある。こっちはライブの開演が迫っているんだ。リキッドルームに行かなきゃならない。ナッツが減らない。馬鹿野郎!機内サービスがなっていない!今すぐ飛行機から降りろ!そうCAに激怒した俺は、機長にまでその怒りをぶつけ、ナッツも投げつけ、飛行機を搭乗ゲートに引き返させた。

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『書を捨てよ町へ出よう』

野田秀樹が『エッグ』のパンフレットに、

「台本を見ていたら、自分のものじゃない言葉を見つけた。どこから来た言葉なのかわからないままだ」というようなことを書いていた。寺山修司の未完成作品を発見するところから始まるこの芝居は、彼の本を読み進めるように進行する。

自分が寺山修司を知ったのはこの時だった。説明できないことは割愛する。分かりやすいブログを見つけた。

自分の言葉じゃない、どこから来た言葉だったか思い出せない。そんな感覚がある。

記憶と風景の関係についての言葉だったと思う。もしかしたら内と外の関係についての言葉だったかもしれない。
エッグの初演は自分が初めて劇場で舞台を見た記憶になる。難解だった。本で何度も読み直してみても、未だにわからない。家族に連れられて行った。


***


一人で見に行った最初の芝居は、マームとジプシー『クラゲノココロ モモノパノラマ ヒダリメノヒダ』

「白」い記憶がある。

吉祥寺の、壁が白いカフェでこの劇団を知った。何かで見つけた「書を捨てよ町へ出よう」という言葉の響きに寄せられて、ただ出かけてみようと思った。アパート二階の狭い清潔な席に着いて、これではないと気づいた。

格通知と入学式の間の、何者でもない自分がさらに何者でもない時間の、居心地の悪い白い時間。『書を捨てよ町へ出よう』をマームとジプシーという劇団がかけていたことを知った。公演は二ヶ月前に終わっていた。


***

「あなたは自分のことを何者でもないと言うけど、何者でもないと思って欲しくないという気持ちが透けて見えるところが、嫌いでした」

そう言われているみたいだと思った。

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本当は、「自分を忘れて幸せになってくれ」という手紙への返事なんだけど。

付けっ放しのラジオと、目覚まし時計の音で目覚める宙ぶらりんの主人公。大切なものを失ってからの一歩目がなかなか踏み出せないのに、外から自分を見つめる眼差しがいつのまにか存在している重さ。朝倉あきの凛とした、軽やかな姿とは対照的な話なのに、冷たさを感じない。

ラストシーンは、ラジオのかかる食堂で見せる彼女の笑顔がとてつもない破壊力だった。
大切だった人が自分で命を絶つことで、結果的に残されてしまった人が何をするか。中川龍太郎監督の前作『走れ、絶望に追いつかれない速さで』も似たテーマだったし、こっちはロードムービーのような話だ。

風景と記憶の関係、はこの映画の何かのセリフだったかもしれない。
好きな監督だったけど『四月の永い夢』は、川崎ゆり子が出ていたから見た。マームとジプシー常連の役者で、この人の声が好きだ。

そして、この映画の鍵でもある主題歌が、赤い靴の『書を持ち僕は旅に出る』だなんて。


***

マームとジプシー『書を捨てよ町へ出よう』

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71年に寺山修司が監督を務めた同名映画がある。話の流れはこれに沿っていたし、同名小説に出てくる話も取り入れていた。ただ、70年代の本だ。藤田貴大の脚本は、現代の劇場・表現を意識したものになるに違いないし、再演の今回は衣装・舞台装置に関わるクリエイターの役割も大きい。

「何してるんだい?暗闇のなかで、そうやって腰掛けて待っていたって何にも始まらないよ。スクリーンの中は、空っぽなんだ。いま、ここにいる俺たちだって待ちくたびれている。何か面白いことはないか。だれも、俺の名前を知らない。」

f:id:ray887:20181017233619p:imageスクリーンから直接問いかけた、あの映画の冒頭。映画は、フィルター越しに色をつけられた世界をうごめく私を写したけど、藤田さんが見つけた現代の色は「銀」だった。

寺山修司の様々な要素を詰め込むコラージュ的手法と、藤田貴大の見せるサンプリング的手法はもしかしたら似ている。

映画のシーンや、映像、コント、短歌、神の視点として現れる川崎ゆり子。

舞台の最後は、映画の冒頭につながる。私が叫び、暗転する。重いものを運ぶ音だけが聴こえる。
「何してるんだい?暗闇のなかで、そうやって腰掛けて待っていたって何にも始まらないよ。」
あの時間、観客はそう問われて劇場を後にする。外へ出るのだ。劇場がどういう場所なのか。表現を見るというのはつまり、内に留まる時間なのか。どうせお前の名前なんて誰も知らないんだから。

路地を通して見つける世界

内と外をつなげる表現そのもの

負け続けた人間の行方


*** 


内と外

記憶と風景

ひとりぼっちの町で、見えるものは何か。

寺山修司をもっと知りたい。没後35周年とは思えなかった。未来的なのかもしれない。過去の景色を通した言葉が、新しい景色に照らされて別の記憶に結びつく。そして現代の表現として別の景色になる。サンプリングすることで見える循環は、現代の自分にはとっつきやすいものだった。

そういえば、CRCK/LCKSは寺山修司の詩にも曲をつけてライブで演奏していた。小西さんは野田秀樹寺山修司を好きみたいだし、個人で主催する「象眠舎」もきっとそこから取ってるはずだ。東京ガガガで園子温が叫んだ詩にメロデイーをつけた曲がある。

窮々.汲々

「くたびれる」という言葉をすっかり使わないで、「疲れた」ばかり連呼してない?

くたびれる。ってなんかいいな、なんなら少し浪漫含んでねこいつ?なんて思った。

使い込んで、寄れてきて、汚いけどどこか味みたいなのがある感じ。

疲労・疲弊の「ひ」っていう音には、なんていうか、誰も寄せ付けないナーバス感、近寄りがたい限界感、消費された価値の低さを感じる。

草臥れる。漢字もかっこいいじゃんなんか。

カ行・タ行もなんかいい。限界近くではあるけど、でもまだ行けなくもないよという色気?


くたびれてるでしょう?

疲れてるでしょう?


「金麦冷やして待ってたよ」

に添えてほしい言葉はどっちですか。

前者じゃない?

でも逆に、


あーくたびれた。

あーつかれた。


「今日も9%飲んで寝ちまおう」

に馴染みのいいのはどっちかと聞かれたら、

後者だよなあ。

だから、多分今の日本は、みんな疲れてんだ。みんな9%ばかり飲んでるでしょう。疲れた野郎が家で9%の缶を開けて、何をするか。テレビをつけて、ただでさえ苦いチューハイがもっと臭く感じてすぐ消すのにももうウンザリで。何をする?

みなまで言うな。わかってる。

どうせお前も、中田敦彦オールナイトニッポンプレミアムを聴いてるんだろう。

***

今、疲弊しきっていて、時間はないけどそこそこ金のあるお前が救いを求めて買うのは壺じゃない。「幸福洗脳」のTシャツなんだろう。

お前も歳くったな。キラキラしてんなよ、おっさん。こっちからしたらまだ、おっさんとジジイの区別なんてないんだよ。

あいにくだけど、悪いけど、

大学生は壺もTシャツも買わない。

坂上忍中田敦彦も変わらないんだよ。

ごめん、それは嘘だ。坂上はくたばれ。


でも。新しい喫茶店を見つけて、毎日通う時間がある。授業は適当に済ませて、いい感じの本屋を見つけた。そんな楽しみがまだある。人の夢に乗っかろうだなんて歳でもないんだ。憧れる人なんて他に山ほどいる。でも、まあ、想像はする。ジジイの時間って呆れるくらい長いよな。

「自虐じゃない。俺は叶えていく笑いなんだ」いいじゃない。もちろん、浪漫なんて感じてないよ。安く酔っ払えるのはこっちにとっても革命なんだ。

共有しよう。

好きな四字熟語?数字でもいい?

じゃあ、99.99 で頼むよ。

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斯々然々(9/30〜10/3)

「半分、青い花柄のワンピース」

夏休みがお暇を頂きますなんてゴネるから、渋々履修登録をして、再履修が3個もある!というパニックなのかパンデミックなのかパナソニックがそよ風扇風機を開発してくんねえかな、なんてことを思いながら、結局は「半分、青い」を見終わった。そよ風扇風機はBALMUDAという会社が作っていたから安心した。和子さんが死んだのも堪えたのに、最後裕子ちゃんまで奪っていくなんてほんともう勘弁してよ。

そよ風どころかこっちは台風だよ馬鹿野郎。俺の夏休みはりんご音楽祭に行って、CRCK/LCKSを見て終わらせるのが決まりなのに、勘弁してくれよもう。再履修?知らねえよもう。再々履修なんだから俺は。

秋風先生の自己啓発本が平積みになってるジュンク堂で「A子さんの恋人」5巻を買って、「あいつをどうやって殺してやろうか」と歌わなきゃいけない午前3時にゆっくり読んだ。読み終わったら台風は無事通過していた。きのこ帝国がベースメントでやるってなんだろう。すごい行きたくなるよね。金属バットを振り抜く夢かあ、知らぬが仏だな。仏だけに、ほっとけ、ゆうて。お後がよろしいんちゃいまっか。

***

「お前、ジェーンスーより進んでんな」

というフレーズに聞き覚えがあると思いますが。神田松之丞のラジオ。え?まだ聞いてないの?逆に何してるの?まあいいや、とりあえず俺もジェーンスーより進まなきゃいけないと思って、とりあえずジェーンスーの人生相談の本買ってきて読んだ。単身赴任してから柿ピーのピーナッツばかり余ってしまって、普段子供が食べてくれていたそのピーナッツを見て家族が恋しくなった。この相談が最高だなあと思いながら博多通りもんを食った。

松本人志が出した大喜利のお題に若手芸人が答える答案集も置いてあって、ついでに買った。第2弾が出ても買うな。火星人の殺し方/ゴリラへの詫び状/日本人はなぜうんこが好きなのか、の三本。火星人というお題に対する答えに出す宇宙人はほとんど金星人という発見。俺はこの答えが好きだ、みたいなのを話し合うだけで面白い本だと思う。俺は高木たえ子の答えが好きだった。多分ネタはつまらないでしょう。知らんけど。

ジェーン・スー 相談は踊る (一般書)

ジェーン・スー 相談は踊る (一般書)

 
火星人の殺し方

火星人の殺し方

 


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「ロボットは危険よ?ラドクリフ博士は80年代のアメリカ映画を観てないの?ああもう、科学者ってバカね」

Marvel's Agents of S.H.I.E.L.D.もシリーズ4に入った。インヒューマンズという最高の存在を登場させたくせに、ドラマ「インヒューマンズ」は宇宙人がハワイ観光をするだけの駄作に仕上げたマーベルが今度は人工知能ロボットを引っ張り出してきた。ウルトロン・ソコヴィア協定なんかの単語が出てくるのはさすがMCU。超面白い。アンドロイドのエイダが美しく機械的で神々しい。マロリーヤンセン、綺麗。綺麗なロボットときったねえ化物ならどっちがいいよ。


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クロちゃん「水曜日でしょ、これ?」

女「え、今日水曜でしたっけ?」

水曜日のダウンタウン2時間sp、すごかった。MONSTER HOUSE、見ていられない。知ってる形に歪な物が入ってくる気持ち悪さ。ぼくらの、に似てね?とか思ったり。

アンインストール

アンインストール

自分が恥ずかしくなってきて本家も見てられないけど。パロディーとはいえテラハっぽいトーンの映像からスタジオに降りてきた時の絶望感。

たまにあるよなあ、ああ、俺でもわかる。こいつこれだけで仕事増えるんじゃねえか。満点の出来だった今の。みたいなの。ノブコブ吉村がホームランを打った。テレビっていいよなあ。また言ってる。


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「あなたの秘密を教えてください」

台風一過。金木犀もだいぶ散った。なんだかんだ徹夜。そして終わらない。アイデアなんてない。アイディアじゃなくてアイデアとしてしまうあたり、いつか星野源に殺されるんじゃないか。あいつ何冊本出してんだよ怖えよ。朝に寝て昼に起きてドトールに行って郵便局に駆け込む。受付完了メールが来たから間に合ったらしい。でっち上げを丁寧な文字と敬語で盛り付けて封をした2度と見たくない、その一瞬の渾身のエントリーシートなるブログ。あれを開くスーツの野郎はきっとアイコスなんだろどうせ。

夜。日中ドトールでたっぷり煙を浴びたシャツに袖を通し直すだけで出かけたくない。

またタバコの話かよ。入試の自由英作文で禁煙ブームについて書き立てて落ちてるのに、就活でもタバコネタ書いてるのはなんなんだろう。まったく懲りてないなお前。

ピンチはチャンスじゃないんだよ。タバコ吸ってるだけだから。ピンチでもチャンスでもないから。

うるせえなあ化物。

化け物を化物としてしまうあたりいつか星野源に殺されるんじゃないか。あいつ何冊本出してんだよ怖えよ。何繰り返してんだよ。サビか。でもまあ、出しちゃったし。シャツ着ちゃったし。出かける。とりあえずあれは出したし。同期七人、馬場。悪くない、悪くない。モロハか。革命起こす幕開けの夜!!!うるせえよ。ギャラクシーの声やってろよ。どちらかというと金木犀の夜だよ。きのこ帝国がベースメントでやるってよ。まだ言ってる。

缶チューハイ飲んでいたら緊急地震速報のアラーム。超音でかい。うるせえよ。ギャラクシーの声やってろよ。サビその2かよ。ボブスレー二回戦かよ。

酔うと鼻が詰まるのなんとかなんねえかな。

ホームのゲロに気づかねえ。

ホームのゲロに気づかねえ。

ホームのゲロに気づかねえ。


文章で徐々にフェードアウトとかねえから。

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