Laundry Land

いよいよ就活生。

ご冗談新歓態勢

今日も終電ギリギリのところまで酒を飲み、倒れるようにふとんへ入る。翌朝7時に起きたら、タバコの煙でガシガシになった髪を洗って家を出る。午前中はとにかく水分が欲しいし、昼過ぎまで腹は下し気味。なんとか腹に物を入れたら、今日もコンパ。初めまして、こんにちは。どこに住んでるの学部はどこなの他に気になるサークルハアルノ、、、
ビールだチューハイだ終電だ。
終電と1限の板挟み。会いたい人たちにも会えない、行きたい場所にも行けない、そんな新歓期。今日もジョッキの前から身動きが取れない。明日は飲み放題らしい。

夜。一年生を見送ってなお、缶チューハイを握っている。四月と言ってもまだ夜は冷える。ぼんやりした頭に手のひらは冷たい。
「こんな風になるもんなんだなあ」
呟く以外ない。インターンだ、就活だ、きっとこのまま学生生活も終わる。五里霧中のまま御臨終だ。新歓コンパなんて三男三女の無い物ねだり。大学生活ああすべき、このサークルではこうすべき。5時に夢中!のマツコデラックスか。


はぁ。。どうしようもない。。。
あれ、気づいたら周りの奴らがいない。

高田馬場ロータリーの汚れた熱気に比べると静かなここは、大隈講堂がじっとり見下ろしている。

見上げれば、ぼんやりと発光した講堂の時計が見える。
最近はいつもそうだ。時計はいつもてっぺんの短針に長針が追いつく頃。繰り返し。同じ景色。終電で帰って7時に起きる。今夜もシャワーを浴びる元気は多分ない。
さっきまで一緒にいた同期は笑っていた。煙草臭いそいつも胡散臭い先輩のツラをしていた。自分が一年の時に見た三年生の顔と同じだ。鏡がなくてよかった、自分も相当アホなツラをしてる。


握ったものを飲み干して講堂に目をやると、ちょうど時計の針が重なる瞬間だった。
あと15分で終電。家に帰って5時間ちょっと寝たら、また明日が来る。

ゴーン、ゴーン、ゴーン。
ワセダに鐘が鳴り響く。おかしい、夜はならないはずだ、、、、、


時計の中の歯車がギュルギュル回転を始める。

 

日差しが差し込む講堂の入り口からスーツを着た自分が出てきた。キャンパスに足を踏み入れた途端、ピンク色の新歓ムードが取り囲む。大学に入ったら何をしよう、誰と出会うんだろう、期待に胸を膨らませる自分を、両側からチラシの山が襲う。サッカーに興味はないかい!映画を撮らないか!ファッションでワセダを変えないか!
そんな声がこだまするセンパイの川を潜り抜け、大隈重信を目指す。

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なかなか進めない、揉みくちゃにされる自分の目の前に現れたチラシを、、わけもわからず掴み取った!


「さて、新入生諸君。ご入学おめでとう。
こんな機会だから、なんて偉そうに喋りたがるのがありがた迷惑だなんて百も承知。
ただ、この大学ではこうすべき、早大生たるものああすべき、そんな我々の言葉に是非、耳を傾けたたまえ。
なぜなら人は人の上に人を作るからさ。天上は天下、唯我はこのまま独尊状態だ。
学問のすゝめったってあんなもんインチキだ。早稲田にあんなもの関係ありやしない。
キャンパスにも、財布の中にもいない福沢諭吉大先生の教えをありがたがるなんて笑止千万の千夜一夜ってもんだ!さあ酒を飲もう乾杯しよう!校歌を歌おうではないか!」


先輩の声を思い出す。時が経つのは早いものでもう三年生。
胡散臭い上に煙草臭い先輩のもとで2年間、私は早大生たるものどうすべきかをみっちり仕込まれた。この世の中は嘘ばかり。そう言い残した先輩はサークルを引退されたがどうやら卒業証書は貰ってやらないつもりらしい。

残された私は、先輩の偉大なワセダ魂を受け継ぎ、それをまた継承するであろう一年生たち相手に日夜コンパに勤しみ大声張り上げている。
今日も無事1日を終え、疲れ果てた私の目の前に大隈講堂がそびえ立つ。この時間の時計は私を圧倒するほどにでかく、発光した黄色が薄気味悪い。
明日もコンパ、明後日も。喉は枯れ、タバコも切れた。この缶を飲み干したら私の持ち物は無くなってしまう。私の魂の中に刻まれたものさえあれば大丈夫。そう言い聞かせつつも、もしかしたら全てがハッタリなのかもしれないと言う不安が喉の奥で引っかかる。
吐いてみても出てくるのはアルコールだけだった。。
「こんな風になるもんなんだなあ」

大隈講堂の時計の針が重なる。
頭上で鐘が鳴った。


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こんばんは、こんにちは。
おはよう、世の中。

ついに世の中を相手にし始めた星野源の歌が、今日も日本の朝を柔らかく迎えているけど、京都の街で花澤香菜を追っかけ回していたあの白い肌の大学生も、間違いなく星野源の声をしていた。

「あの子ならスケートボード蹴って表通り飛ばしてったよ、いい加減諦めな。お前にできることはこの杯を乾かすことだけ。杯を乾かす、乾杯ってのは常にそういうことだよ。」

道化師の声に背を向けて何を目指す?

夜は短い。
寝ていた方が短い。
あっという間に朝、明日も1限だ。

迎える側、迎えられる側
全てのサークル関係者へ。
行き着く先は
「こんな風になるもんなんだなあ」でしょう?
あなたの無事を祈ります。
僕たちは、どうだろう。

 

 

四畳半神話大系?何それ。