Laundry Land

いよいよ就活生。

斯々然々(6/27)

君は最近やたら救急車のサイレンを聞く。

この国の医療ドラマは全てここで撮影されているのではないかという24時間の大病院へ向かう救急車は、アスファルトが火照る季節と食卓に餅が並ぶ季節によく走る。

「平成」がつくかつかないかで偏差値が変わる有り難い大学と、そこと直結した病院からすぐのマンションに君は住んでいる。エアコンのない自室から今夜も抜け出した。

桜並木が有名な川沿いのここいらはレジデンスだのグランドだの大層な名前で白いだけのマンションが未だにょきにょき生えていて、一番新しくできたところはお隣の半島と大陸とその他島国出身のご家庭がこぞって入居しているらしい。
少子化がベタなこの国で、君の通った小学校は教室の増築をしていたし、通ったことのない保育園前は毎朝ママチャリが列をなしていた。

餅を詰まらす老人が多いとは思えないアンバランスな居住区に鳴り渡る救急車、アンビュランス。
ああ、部屋が暑い。

君は、小学生の頃から都営地下鉄で学習塾に通わせれ、中高と大使館が立ち並ぶしゃれた街をプリン色の髪で闊歩した挙句、受験に失敗して急ごしらえの京都移住計画は無かったことになった。
終電帰りの日は忍び足で部屋に帰る生活に、不満はないけどこの時期はウンザリしている。
大学三年、現在の日課白い巨塔よりさらに目と鼻の先のコンビニ喫煙所でタバコを吸うこと。
セブンイレブンが24時間営業であることを当たり前に思わない人はもういないだろうけど、外装が茶色いセブンはもう当たり前のものになってるんだろうか。

低くなった救急車のサイレンがやがて消えたあたりで君の隣に黒い影がスッと腰掛けた。
なんか不吉で嫌な感じがしたけど、
首を曲げるとドミノピザの兄ちゃんだった。
スマホの電源が切れて配達先がわからないから教えてくれと言われ、そんな適当に仕事してる奴が君は好きだから、散歩がてら一緒にお届けに上がった。

梅雨はもう終わったのか。
風が強い。
もうすぐ夏だもうすぐ夏だと言い続けてるけどいよいよかもしれない。
夏が来るということは、次に思うのは夏が終わってしまうということで。
そんなことあってたまるかよ、と君は思う。

幸いなことに、「平成」がつこうがつくまいが夏の偏差値は変わらない。
ただ、「平成」がつかなくなった世界は君には少しやり辛いかもしれない。

暑い部屋から忍び足で、今年の夏からどうしよう。

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みんなバーに帰る

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