Laundry Land

いよいよ就活生。

『RELOADING CITY』

街は再読み込み中。ビルはより高く。空は狭く。漠然とした"東京オリンピック"を目指して街は進んでいる。

HOT CV

HOT CV

Hold on to crazy vibes

醒めたまま見る夢。リローディングする街とアップデートできない人間。

ものんくる『RELOADING CITY』ワンマンで見せたライブは素晴らしかった。一曲目の「HOT CV」を中盤でも挟み、いくつもの曲のサビを次々に乗せていくのはまさに読み込み中。読み込んだ後の再スタートをポルノグラフィティの「アポロ」カバーから始めたのが正確だった。

ぼくらの生まれてくるずっとずっと前にこんなアルバムが出ていたんだ、そう振り返ることができるCDだ。でも、今の東京で、再開発や建設中の表示とすれ違いながら暮らすぼくらにとっては、未来にこの経験を証明する音楽だと思う。

夜のヒカリ。工事現場の点滅。ブラックとオレンジのボーダー。巨大なブルドーザーのイエロー。空に突き刺さったようなクレーン車。白く照らされている。立ち入り禁止の網目を指先で触る。(藤田貴大)

東北の映像がひとしきり流れてからすぐ。訳の分からない外国人が開いた封筒をきっかけに、気付いたら東京は一人読み込みを始めた。街全体が一斉に動き始めたらしいが、僕たちの期待は置いてけぼりにして街は工事現場でいっぱいになった。何かが生まれる不思議な気配だけが薄っすらと漂う、読み込み中の街。

 

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渋谷ストリーミングが完成して、オープニングイベントにものんくるが出演した。高校の頃によく歩いた川沿いのあそこ。去年、根元にあった本屋が潰れた、今もバイト帰りに通っていたところ。よく風の通るフェンスの下から見上げても、突き上げるそれがどこまで高いのか見えなかった。

膜で覆われた黒い塊、白い光のライト、剥き出しのクレーン、振動と騒音の数値を知らせる電光掲示板。人の気配のない渋谷の隅を、なんだか月面の景色みたいだと思った。誰の想いも、気配も感じないその景色の写真を使ったフライヤーを作って、企画を打ちたいと去年考えていた。当時の企画名に「Apoloooo!!」と書いてあった。アポロ11号着陸の生放送にみんなが注目した1969年。大阪は翌年の万博に向けて読み込み中だったはずだ。僕らの生まれてくるずっとずっと前から半世紀、今ならアポロはどこを目指すんだろう。一体どれほどの人が、息を呑み、拳を握って、五輪を迎えるんだろう。オリンピックの持つイメージが、どれだけ自分の生活に入り込んでくるのか、未だ掴めないのは何故だ。

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次々と消えていく。人が、建物が、番組が。まるで平成なんてなかったかのように。平成以前に生まれた人間が、平成の後の時代で終える人生を目指して指揮をとる。この時代に生きた証は、この時代に死ぬか、先の時代に賭けるしかない。けどそれは大変そうだから自分は前者をとるよ。大変に失礼だとはわかっているけど、そんな風に感じてしまうのだ。否が応でもこの再読み込みも近いうちに終わる。出来上がった建物の展望台から見る景色よりも、その高さを見上げる自分の想像しかできないのはなんでだろう。

Hold on to crazy vibes

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サグラダファミリアにやっと許可が下りたんだって」

サグラダファミリアってあの、」

「スペインの」

「ああ。え、許可?」

「あれ、建て始めたの136年前らしくてさ、現代目線だと超違法建築なんだって」

「あ、そう。出来上がらないやつの代表みたいなとこあるよな、あれ」

「それがさ、許可下りるじゃん?あと8年でできちゃうんだって」

「まじ?下りた途端だな」

「でもさ、できちゃったらさ、なんかもうサグラダファミリアの意味なくなると思わない?途中なのがいい、みたいなとこあんじゃん、あれ」

「渋谷の駅はさっさと完成して欲しいけどな、あれ。迷う。」

「まあ。でもサグラダファミリアはさ、絶対完成させないべきなんだよ。どうせさ、あれを建ててきた爺さんみたいなのがいてさ、そいつが70くらいでさ、最近腰も痛えし、俺が死ぬまでに完成させるなら今しかないってわがまま言いだしたんじゃないかと思うんだよ、おれ。爺さんみたいなののわがままなんだよ、許せないよ」

「爺さんみたいなのってなんだよ。まあでも、完成させないほうがいいような気はするな、おれも」

サグラダファミリアの一番いいところじゃん、途中なのが。それを無くすんだからさ、完成とは真逆だよね」

「じゃあ、一回さ、出来上がるじゃん。それは、もう決まったんでしょ。できてさ、その70の爺さんみたいなのによかったねってみんなで言ってあげてさ、そのあと全部爆破して壊したらいいじゃん。で、また一から作り始めればいい」

「そんな刑務所の作業みたいなことする?」

「でもさ、やってる途中っていうのがいいとは思うし、作ったら終わりだし。おれらが働いてるこのライブハウスの隣のこれもさあ、別に誰も完成は期待してないんだよ。だからさ、パルコも全部出来上がったら全部ぶっ壊れてくれないかなとは思ってる。」

「ロケットとか、落ちてこないかなあ」

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Hold on to crazy vibes

my vibes