Laundry Land

いよいよ就活生。

アテンションプリーズ

夏になる前、確か梅雨時だった。
「お客さん、ここはゼップダイバーシティceroじゃなくて、ゼップトーキョーの鬼束ちひろコンサートなんですよ。方角的にいうとあっち。お台場のガンダムの根本にある会場で、ここからは10分くらい。あそこに地図があるから、多分開演までには間に合うと思うよ。」
みたいなバイトをしていて、雨だった。
俺が突っ立ってる入場口から見える自販機のところに、宅配の原チャがブイーンと走ってきて、オカモチと段ボール持った兄ちゃんが降りたままキョロキョロしているのが見えた。
宅配場所が分かんねんだな、と思ってたらやっぱりその兄ちゃんがこっちに来て。
「すみません、ファーストキッチンはどこにありますか」
「うわあごめん、分からないや」
「そうですか、すみません」
ceroの客というのは時間にルーズというか、楽しめればどの位置でもいい、みたいな奴が多くて、俺はそっちの相手もしないといけなかったけど、隙を見て調べてやった。
頭上の大観覧車のちょうど向かいにあったから、近くて良かったね。ありがとう。なんて交わして兄ちゃんは階段を上がっていった。
しばらくして、
「さっきはありがとうございました、これ、よければ」
って、ほうじ茶ラテをくれてまたブイーンと走らせていった。片言の日本語と、暖かいペットボトルが気持ちよかった。
あの時はとても憂鬱な時期で、しかもまだ続きそうな予感があったのに。そんな時に心からのありがとうが久しぶりに言えて、なんか嬉しかった。

あの兄ちゃんはきっと、自分も困ってたかもしれないけど。ワクワクしながらライブハウスに来る客を仏頂面で対応する、覇気のない日本人を励ましてくれるために、あえて俺に声をかけたのかもしれない。
俺の目の前にそんな奴がいたら何ができる?

簡単な言葉でも、その奥の部分を盗み取ってしまう能力に、きっと俺たちは疲れている。

「タコの刺身って食ったことある?ゆでだこじゃないよ、刺身。真っ白でイカより透明なんだ。柔らかくてさ、でも保存が効かないらしいから仕入れてるところが少ないって話も聞いたことがある。今度食べに行こうよ、というかタコ刺し出す店探してよ、俺食べたいんだ。できれば蕎麦屋がいいなあ、寿司屋でもまあいいけど。あ、タコだめ?あ、生もの嫌いか。じゃあしょうがないねえ、ふふふ」

とかなんとか言って、ほうじ茶ラテを差し出せたらいいんだけど。心と体が人間の全てだって言ってたよ。なんつって、オリンパスを貼ってあげたい。オリンパスって違うな、あれはサロンパスか。まあいいや。

実のところは俺がそうしてほしいだけかもしれない。でも最初にそうやって自分の隣に座ってくれる人がいたからそうなんだと思う。

大凶をひいて、濡れた歩道にメロンパンを落っことす人を見てしまったらすかさず、
「ピースの箱には10本しか入らないから、11本目のピースは入るべき箱がないんだ。だけど、人間は決して何かのピースじゃないんだよ。」
って言ってあげたい。
ハァ?って顔をされたい。

そこはメロンパンとほうじ茶ラテセットで差し出してやれよ。

***

って書いてるんだよね。6月の俺。
疲れてたのかねえ。

離陸 (文春文庫)

離陸 (文春文庫)

 

 

 

神田松之丞 問わず語りの松之丞

耳が早い人たちの間でその番組が囁かれるようになってしばらく。
「神田松之丞 問わず語りの松之丞」がとにかく面白い。
"講談師の神田松之丞" ってもう色々雑誌テレビに出てるし、佐久間Pとかヒコさんとか、そういうサブカル界隈でもバズりまくっている。

***

「ラジオの友は真の友」と締めくくる前口上から始まる30分の1人喋り。
独壇場、独演会、落語の枕的な喋りとでも形容できるのかしら。こんなことが起こった、こんな人と出会った、こんな仕事をしたということを、俺がいかにすごいか、を差し込みながら愚痴る。
「講談をもっと知ってもらう」という使命だけを持った、本人曰く"竹槍戦法" は、容赦なく先輩、タレント、業界全体まで清々しくイジっていく。久し振りに辟易しない毒舌芸と出会った。
芸能人を呼び捨てにするのも聞いている側は嬉しい。そもそも、芸歴・上下関係・事務所なんかの "暗黙の業界ルール" は本来リスナーには無縁なのだ。"非素人" の都合でその関係性に付き合い続ける我々素人も少しお人好しな気がする。
ラジオから聞こえてくる声が古舘伊知郎を呼び捨てにする感じは、前口上の「ラジオの友は真の友」通りで、行けっ!松之丞!という外側にいるリスナーからの期待も乗っかっているのかもしれない。

講釈師の喋りが上手い、なんて言うのは何様だって話だけど、ラジオパーソナリティとして聴き比べてみると、やっぱり上手い。
演じ分けながら一人で物語を進めるのが本業の芸人が、ラジオ尺でフリートークをすると30分なんてあっという間に過ぎる。
声色を使い分けるところ、敬語から乱暴な言葉遣いに変わっていくところ、語尾や間まですべて。とにかく聴きやすい。
気にくわないところは何度でも取り直す録音のスタイルも大きな要因かもしれないが、それでも。どれだけふざけても、滑らかで上品に聞こえる声。やっぱりこの人は、耳馴染みのある芸人とは違う畑の芸人なんだと思う。

芸歴10年以上、35歳になる芸人のスキルがすごい。なんて言うまでもないことでしょうが。
こんな当たり前のことを、顔ぶれの変わらない最近のテレビは忘れさせてくれるから、とても新鮮に感じてしまう。(パンサー尾形が40歳と言えば伝わるか。)(余談だが、オードリーのannは最近若林がこう言う部分で葛藤している感じが面白い。)


***

一人語りと言うが、笑い屋シゲフジという男が録音ブースに入っている。誘い笑いというやつで、普通は構成作家がこの役割を担うけど、彼は毎回冒頭に紹介される"笑い屋"である。
伝統芸能に関係する人間の一人語り×笑い屋」
この構成といえば、そう。TBSの王様、伊集院光が出てくる。
「問わず語りの松之丞」は「深夜の馬鹿力」を連想させる何かがある。

例えば。

「(雑誌の取材を受けたとき) 1人が取材の方でさ、年齢は、、50くらいの人かな。あーよろしくお願いしますなんて言ってさ、結構小太りの方で。なんだろ、いかにもなんかこう、風俗の常連みたいな顔してる笑。あのー笑、風俗嬢初めてやるときに、とりあえずこの常連のお客さんの意見聞いてから、君が向いてるかどうか決めようみたいな笑。店長が決める時の常連みたいな感じですよ。。。今日はね、母の日らしいよ笑」


これ、どっちのトークだと思いますか?

松之丞なんですけど。どこか被って聞こえませんか。なんでしょう、この感じ。一人喋りの型としてはよくあるパターンだよ、と言われてしまうとそれまでだけど、散々突き進んでパッと逃す感じ("〜やってんだから。いややってねえよ!!" 的なやつ)とか、知ってるやり方が多い。

伊集院は落語から足を洗ってラジオに絞った人だが、度々落語の話は出てくる。元々の師匠、三遊亭円楽の不倫がバレた週の放送は嬉々として聴いた。
("師匠への義理立てがあるからラジオで喋る前に一度直接挨拶に行こう。手土産は何がいいか。プリンなんかどうか、いや、プリン?ダメだ!不倫をいじってると思われる!"
という土産探し珍道中)
昼のラジオに円楽が出演したこともあった。伊集院光は未だに、落語との関係が直接的なもののように感じる。

伊集院のラジオを聴いてきたと松之丞は公言している。影響やリスペクトもあるみたいだ。
元落語家・現ラジオスター伊集院光と、現講談師・新星ラジオパーソナリティ神田松之丞。
そんな二人の直接対決が、今年の7月に「伊集院光とラジオと」であった。
「俺のこと、どう思ってます?」
15も年の離れた二人だが、お互い気になることはこの一点に尽きたように思う。リスナーの焦点もここだ。
「落語をやるためには高校を中退しないと行けない、ラジオをやるためには落語を辞めなければいけない。それが過去の自分の言い訳だったんだと今ならわかります。」と伊集院。自分が履けなかった二足のわらじで闊歩する講談師に対して何を思ったのか。
しかも、伊集院光は「(腐りかけの今が面白い、と明言した上で)深夜の生放送は近いうちに店仕舞いします」と事実上の引退宣言までした。これを引っ張り出した松之丞は、お墨付きをもらったといっていいんじゃないか。
お互いに腹を探り合ってるうちに終わる対談だったが、ラジオファンとして鮮烈に面白かった。


***

絶賛。
今の神田松之丞に対する評価はこれで間違いない。
ENGEIグランドスラムダウンタウンなう報道ステーションなど、今年だけで数多の有名番組に出演。講談を紹介する仕事をしっかりこなした上に、竹槍戦法の毒舌サービスまで振りまいた。
"日本一チケットの取れない講談師"という前振りで出演したよくわからねえ奴が、キャラクターも面白い。そんなの注目されるに決まっている。
伊集院の他にも、爆笑問題笑福亭鶴瓶高須光聖。業界の有力者のラジオに出演しては、絶賛。
その時の様子を赤裸々にラジオで話せばリスナーも大喜び。
同じTBSラジオ爆笑問題高田文夫やジェーンスーも華麗にいじってみせる。

出れば出るほど、"自分の本業はあくまで講談だから、この華やかな業界で干されることになっても別に構わない" というスタンスが魅力的に映る。
今のテレビは自分の役割(本業)を譲らない人が少ない。役者もミュージシャンも平気でアポなしグルメロケに行く。
色物ばかりのエンタメ界に、正真正銘黒文字の芸人が現れた。
殺到しているであろうテレビのオファーに、今後どれくらいの匙加減で出演していくのか。
そして、講談師としては未だ二つ目。講談師とラジオパーソナリティを天秤にかけ始める時期もいずれ来るかもしれない。それでも、真打になった松之丞はまだ40前半。その時の伊集院光が何をしているのか、その時のテレビはどうなっているのか。松之丞の目線で見る色物の世界が楽しみで仕方ない。

 

(このインタビューは面白い。有吉のことをそう見ているということ、をちゃんと話してくれる人がなかなかいない。)


しかしなあ、菊地成孔といい神田松之丞といい。
トナミD、すげえなあ。

 

 

 

 

 

 

***

余談。

俺も、話題になり始めたあたりから面白いっていうのはなんとなく知ってたんだけど、いまいち聴く気にならなかったのは訳があって。

このラジオを最初に勧めてきたのは親父で。去年の8月だから、たまたまタクシーかなんかで聞いたんでしょう、始まって間もない頃でした。その日は俺の誕生日だからって家族で丸の内まで出かけて、滅多にない機会だからって高そうな店でステーキ食って、ワイン頼んでいい調子で。お前が生まれたときは、とかそんな話まで出てくるような席でいきなり親父が「神田松之丞ってやつのラジオが面白ぇんだよ」つって。「あいつが鰻屋に行った時の話が面白くて」って。だいぶ酔ってたんだろうけど、知らねえラジオパーソナリティーの知らねえエピソードをそのまま喋り始めてさあ。テーブルの方では、母さんが誕生日だって伝えてくれてたんだろうなあ、チョコレートサンデーに花火刺さったやつが運ばれてきて、店員が今にもハッピーバースデーって歌い出しそうな感じで待機してんだよ。頼むからやめてくれっていう俺と、見たいからやってもらってって母の目線がサンデーの花火の辺りでバチバチしてるなかさ、
「結局鰻が2時間半来なくて」ってお前いつまで喋ってんだよ!

という出会い。はい。
鰻屋の話、改めて聞いたらオチもクソもなかった。

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「ぽたり」

浪人の結果、東京に留まることになった。
目標と言えるものが、1つだけあった。
少しの自信があった。人とは違うという自負も少しあった。
みんなそうじゃないですか。そろそろ僕ら、それに向き合って然るべき時期じゃないですか。
まあ、僕ら、なんて言ったけど、大学に入ったときは、ずっと1人で、目標と、少しの自信と、向き合って行くことになるだろうと思っていましたけど。不思議なもんですね。


だから、大学生活の大きな節目を、UBCというサークルから引退する時に感じるなんて。
誰かと何かをやる、誰かと同じものを目指す。そんなことになるなんて。というか、終わった今でも不思議だ。何が起こるかわからないもんですね。
でもまあ、1人でどう頑張ろうかを考えるところから始まったから。この人のようになりたい、この人の目指したものを俺も目指そう、なんてことは結局なかった。すごいなあと思った人は片手で十分数えられる。(これは、なんかまあ残念だけど、まあ順当にそうなった。1人だけ頭の上がらない人と会えたな、でも。俺は肺に穴あけないようにしたいけども。)

それでよかった。それだけやっぱり、やりたいことがあった。信じていたもの、いや。お守りにしていたことがあった。2つ。
1つは、ヒグチアイというアーティストの歌と言葉、彼女の音楽を聴いていた時間。
1つは、企画を打ちたいという憧れ。
支配、という言葉ではない。ただずっとあった。戻って来れる記憶と気持ちとしてずっとあった。

***

聞く音楽も、行くライブも変わった。
ROCK STEADY WASEDAというサークルで2本の企画に関わった。そのうちの1つは、1人で、完全に自分の理想を追求して形にできた。
だから、去年の四月に目標は叶えられていたわけで、過去の自分に申し訳なさそうにする必要もなくなった。自分はできるんだという自信にも満足をやれた。あの時もうすでに、それを評価してくれる人にも恵めれていた。
満足していた。
叶えてしまったら、焦りも無くなっていた。
自分の中のお守りに照らし合わせても、大切にしていたことを無価値にしてしまうようなことはしなかったから、これから先も大切なものとして付き合っていけると思っていた。

それが、今回、完全に叶ってしまった。
明石家サンタに電話をかけなくても夢は完璧な形で叶う。違う。これはふざけたくない。明石家サンタ無し。

***

高校一年生の時に渋谷gee-geというライブハウスでたまたまステージに立っていたアーティスト。人生初めてのライブハウスだった。
一年後
渋谷の7th floorで、確かに言った。いつか企画をするから、出てくださいと言った。
あの時の自分の言葉と、五年付き合い続けてきた。人に話すようなことでもなくて、ただ大切にしていた。
それが、あの雨の中、完全に昇華していった。すごかった。あの時の気持ちは、すごかった。
俺は大学三年生になっていた。

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聞き取りづらい雨の中、確かに聞いた。うろ覚えだけど。
"私はいろんなライブに出演してきたけど、出演するということは、私を呼んでくれる人がいるということで。今日私を呼んでくれた人のことは、私は覚えていて。多分5年くらい前に、将来こういうことをやりたいと伝えてくれて。その人は、ずっと頑張っていたから、今日がある。私は、この5年ずっと頑張れるていることがあるのかなと思いました。そんな気持ちだった、東京に出てきた時の曲を"
そして、「東京」を歌った。
あの日、初めてヒグチアイを見た人がたくさんいたと思うけど、あの日のヒグチアイのライブは本当にすごかった。
広い会場でたった1人なのに、彼女の言葉は全員に届いて、ピアノから手を離す一挙手一投足に全員が注目していた。(ただうるせえOBども数人を除いて。こういうところが本当に嫌いなんだ俺は。まあいいやごめん。)
力強かった。ヒグチアイも、この五年間(プロとしてはもっとだけど)活動し続けていたからそりゃそうなんだけど。
忘れられない過去が1つある。
"このアルバムができるまでに、辞めてしまおう思ったことがあった" という内容も含んだ手紙が、そのツアーで来場者に配られた。アーティストが活動を続ける尊さに、この時曖昧ながら気づいた。こんなすごい人が、いなくなってたまるか。万が一にも辞めないうちに、俺頑張らなきゃ。と思った。浪人したけど。

あの日、出番終わりに少し話せた。
また「すごい」と言ってくれた。この日の前に、一度挨拶させてもらった時にも言われた言葉。あのときは、違う、あなたに言って欲しいのはその言葉じゃない。と思った。
そう伝えたら、「でも、すごいと思われるのはそれが人からの評価だから。それでいいんだと思う。君自身は、それを当たり前のことのようにやってきたから、そう思うのかもね」「こんなことやりたいと言ったのは覚えてるし、そう言う人は沢山いるけど実際やる人は少ないから」そんなことを言ってくれた。また新しいことを教わった。あと、とても嬉しかった。

最後に、アルバムにサインを貰った。
一番新しいアルバムには、あの日演奏しなかった「ぽたり」という曲が入っている。古い曲だ。初めて見に行ったライブで演奏していた。
平成元年生まれのアイさんが21歳のときに書いた。あのとき俺は16歳。今、22歳。一番好きな曲になった。(この曲が入ったデモの最後の一枚を買った日に想いを伝えた、というのは出来過ぎかしら)
歌詞カードの最後に本人の解説がついている。
「螺旋階段のように上から見たら同じところを回っているようでも、実はだんだんと上に上がっている。そう思いたい! と思って書いた。そうだ! とは思っていなかった。」

俺はヒグチアイの言葉にかなり影響を受けているな、と改めて思った。ぐるぐる回る、繰り返し。身に覚えのある感覚だった。
そして、あの曲を初めて聞いてから6年。
最初は退屈な曲だなあと思っていた曲。
歌詞カードにある"そうだ! " ということを、なんと本人に直接言ってもらえた気がする。
この5年、同じところを回っている滑稽さ、もどかしさ、バカらしさをずっと抱えていたけど、(このブログだってそれがテーマだったりする) 実は上に進んで来れていたのかもしれない。
そう、思った。ありがとうございます。

ステージでは小山田壮平が最後の曲を歌い終えるところだった。終わりだ。と思った。


***


CRCK/LCKS と出会って1つ変わった。
ラクラ、TAMTAM、MISTAKES、Gi Gi Giraffe、RAMMELLS、ZA FEEDO、 Nao Kawamura、YOUR ROMANCE、ものんくる
そして、ヒグチアイ。
オファーをかけて、出演してもらった。
何を思い残すことがある。
彼らが活動を続ける限り、俺はこれからもフロアで好きに眺められる。

ヒグチアイという、特別な存在と、直接関わることは多分これが最初で最後だ。それでいい。充分。そのうちまたやりたいことができたらいいな、と思う。それが螺旋階段だとしても、悩まないで済む。それだけの勇気をもらった。そして、その間もずっと、あの人の歌と言葉はお守りでいてくれる。

***

完全な誤算としては、
自分勝手な俺を認めてくれた先輩、直視してくれた後輩、受け入れた同期がいた。

過去は美化される。
もう全て過去のことになった。どう頑張ってもしがみつけない。
でも、いつでも、そこにあるだけでいいじゃない。
あの日、個人的な部分(組織としては、いくらでも反省がある)では、"今"のうちにやり切れたと思えてるな。と思った。その上で、満足できる過去の思い出にできる。
よかった。

大学生になる前の時間からの、大きな節目が、大学生活の大きな節目にもなった。
これ以上何がある。
よくやったぜ。
それくらいは許していいですか。
サンキュー
ありがとうございました。

 

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***

マローネで書いた。
少しだけ涙が出たからママが不思議な顔して見てきた。
先なんて、全然無理そうです。
"まだ" と言える余裕も、もちろんないです。

どうしようもねえな。やっぱり。

平成30年。最後。

今年の仮面ライダー知ってる?
仮面ライダージオウ』ってんだけど。まず"平成仮面ライダー"って括りがあってさ、2000年のクウガから始まったそのラストが平成30年のジオウなのよ。

仮面ライダーって玩具の売り上げに相当重心を置くから、変身ベルトとかそれに付随する小道具とか、グッズにできる細々したものが登場するんだけど。そいつらを魅力的に見せるために、仮面ライダーにはそれぞれのコンセプトがあるわけさ。
ケータイ(555)、メダル(オーズ)、メモリ(W)、ボトル(ビルド) みたいな。

じゃあジオウは、っていうと「ライドウォッチ」という時計モチーフのギアが登場するんだ。
「ジオウ」=「時王」
この仮面ライダーは、タイムワープして乱れた時を正して、彼自身が時の王者オーマジオウとして西暦2068年の成果を支配する未来に向かって進んでいく物語。

平成30年、最後の平成ライダーとして彼の特徴は、このライドウォッチで過去の平成ライダー達の力を引き出せるところ。
彼自身もちろん変身した姿があるけど、さらにそこから先輩ライダーモチーフのライドウォッチを使ってもう一段階変身できる。
完全に過去ライダーの姿に変身できた『仮面ライダー ディケイド』と違うのは、あくまで過去ライダーを象徴するパーツを全身に装備するというところで(仮面ライダー○○モード みたいな) これから先、懐かしの平成ライダーたちが次々再登場していく総決算ライダーなわけだ、ジオウは。

ディケイドは10周年記念ライダーで、今までのライダーがいる世界は全て並行世界だと定義した上で、その世界を旅するロードムービーだった。だけど、その定義以外は実際のところ曖昧で、それ以降複数のライダーが登場する劇場版は多く作られてきた。
ここで、さっき行った玩具売り上げが出てくる。要はリバイバル作品を作ることなく、過去ライダーをちびっこに見せることで商品売り上げを底上げしようとする戦略。
これは大正解だったわけだ。

仮面ライダー 電王』のように過去にも時間を行き来するライダーはいたわけだから、なんだかんだ行き当たりばったりの戦略展開とも言える。
(仮面ライダー、バカにすることなかれ。今の日本で一年間の連続ドラマというのは、仮面ライダースーパー戦隊大河ドラマだけなんだぜ。)
それでもヒットするのは、リバイバルの強さが理屈を超えた興奮をファン心理にもたらすからだろうね。
るろうに剣心』だって良太郎vsアンクと見たらもうそうとしか見れない。

ジオウもその直接リバイバル作戦に一手間加えた"過去ライダーモチーフ"という新しい姿で、記念すべき平成ラストライダーの成功を約束したような存在というわけだ。

 

さて、何が言いたいかっていうとさ、
仮面ライダージオウ』あれが9/2(日)が初回だったんだけどさ、いやあ、9/1にサークルのイベントがあってさ、その打ち上げが朝まであったせいで見れなかったんだよ。
まったくやってらんねえよな!!!
サークルのせいでさあ!!
平成ライダーラストの初回見逃しちまったよ!!

 

 

 

 

 

 



ごめん。なんの興味もない。仮面ライダー

何の気も紛れない。

ほんと、すみませんでした。

斯々然々(8月末)

面白かったテレビや、本や、調子のいい音楽や、ライブ。気に入ったセリフや言葉なんかはなるべくメモっておいて、溜まった頃に発散してきたこのブログの更新がしばらくなかった。
最近こいつ全然更新しねえなあ、と他人事みたいに思ってたけど、別に他人事ではないなあ、と思う今もなぜか他人事である。
(てつや)

とまあ、こんな書き方に見覚えのある人は流石にいないと思うが、東海オンエアの動画概要欄である。
そう。テレビも、本も、映画も、音楽も、ライブも、ラジオも。ポップカルチャー全般とめっきり顔を合わせなくなり、YouTubeばかり見ていた。
東海オンエアばかり見ていた。
ダメだこりゃ。

 

ああ、その本は読んだ。

だめだこりゃ (新潮文庫)

だめだこりゃ (新潮文庫)

 

日本で初めてストラトのベースを抱えたのはいかりや長介らしい。
というかそもそも、ドリフターズがバンドで、ビートルズ武道館ライブの前座を務めたこと、志村けんが二期生で荒井注の後釜であること。そんなことを知っている同世代はどれだけいるのだろう。別に知ってたからなんだって話ではあるけど。

ビートルズの武道館ライブといえば、こんなのも読んだ。

イエスタデイ・ワンス・モア〈Part2〉―ミート・ザ・ビートルズ (新潮文庫)
 

東海オンエアの概要欄以外の文章を読んでいたことに驚いている。何も頭に入っていないで読み終わっていたらしい。

そんな自堕落な生活をしている自分よりもっと自堕落な生活をしているであろう高校の同級生がいたな、と思いついて久しぶりに電話してみたら石川県の旅館で住み込みのバイトをしていた。自堕落な奴というのは発作的に何かを始めるものだ。年末のマラソンにも登録したらしい。嬬恋のキャベツ農家には落とされたらしい。
蒼井優がそんな映画をやっていた。

ああ、あと一枚だけどCDを買った。

スモール・ホール・クラシック

スモール・ホール・クラシック

 

Apple Musicになかったけど、どうしても聴きたくなってしまったので久しぶりにディスクユニオンに行ったらあった。
650円で買ったけど後から調べたら廃盤だったらしくてアマゾンで1万円だった。もっと詳しく調べたら多分そんなことは無いんだろうけど、ちょっと嬉しかったから得な買い物をしたということにする。
ジャムのBGMで流すことにする。

そう。ジャムというか、当日。本番。引退。
なんと形容したらいいのか分からないが、それが近づいている。というか明後日にある。
チケットは完売した。
解禁ツイートが解禁日に500イイネされた時点で何か浮き足立っていたけど、結局その数は1000まで伸びて、ナタリーにもYahoo!にも取り上げられて、前売り券も完売。
参った。
手放しで喜ぶだとか、ましてや自慢できるようなことではないことは分かっているから、変な気持ちになる。

イベントを企画すること、についてはいくらでも向き合えると思ってきたけど、これはなんだか話が違う。
どんな結果になってもきちんと振り返る責任があるというのは理解してやってきたが、下手に成功の予感がチラついてからもうダメらしい。やわいもので、評価は後輩任せになりそうな気もする。

そういえば、七、八年ぶりに従姉妹に会った。最後に会ったときの自分はガリガリの茶髪中学生で、この前はガリガリのだらしない大学生だった。彼女達は1つ違いの姉妹なのだけど、名前がいいと思ってる。2人合わせて漫才師みたいな名前なのだ。
いとしこいしみたいな。

いとしこいし 漫才の世界

いとしこいし 漫才の世界

 

 

YouTubeにもそろそろ飽きた。少し詳しくなった気がする。少し詳しくなったら本を書けるんだなあ、という本を昨日親父が買ってきた。

一枚もウロコが落ちることはなかったけど、やっぱりテレビの求心力というか、人はテレビに関心を持ち続けるんだなあと思った。
『6人のテレビ局員と1人の千原ジュニア』が見たい。誰か持ってたら貸して欲しい。
目からウロコと言えば、そういや目が悪くなったから眼鏡を買わなければいけない。コンタクトは怖いから嫌だ。
両目2.0の視力が今さら下がったのは、間違いなくYouTubeの見過ぎである。

 

追記

BGMというのはつまり、音源をCDに焼いてPAさんに渡さなければいけないから、自然と昔ツタヤに行っていた時の音楽を振り返って聞いてる。中学生の時に買った小さなアイポッドを久しぶりに引っ張り出して、聴きながら歩いていると、どうしたってエモい。ハヌマーンが鼻の奥を刺激する。

 

俺はあんたの口癖も知らねえけど。

おめえ、そういえば結局留学はしないんだな?いやいいんだ、別に。しろって言ってるわけじゃない。したいなら金は出してやるし、このまま就活しても全然いい。だけどお前はさ、大学で胸を張れるものはあるのか?就活だなんだ言ってるけどな、そんな甘くねえぞ。お前のことを分かって、求めてくれる企業なんてそうそうない。お前なんて、ぜってえ落ちまくるからな、ぜってえ。悪いけど先に言っとく。悪いけどな、そこは覚悟しとけよ。
お前は昔から、才能はあるけど努力はしなかった。そうだろう?努力したことないだろう?
まあ、せいぜい頑張るんだな。

ビール二杯で機嫌がいいな、久しぶりに喋りかけてきやがって。
クソ親父め。
くそったれ。
俺か?お前は。
俺が俺と喋ってるのか?
なぜ分かる?
悔しいこと、曖昧にして逃げていること、切り捨てて辞めたこと、全部突いてくるのはやめろ、的確に。
俺のことは俺が一番分かってんだ全部。
なんでおめえに言われなきゃならねえ。話してもないおめえに知られてなきゃならねえ。

いや。。違うか。
俺がお前なんだな。
そんなに話もしてこなかったのに、なんであんたの考え方に似たんだろうな。流石に俺に何を思っているかは分からないけど、あんたが同僚・後輩にどう接しているか、なぜだか手に取るようにわかる。
声も、口調も、結局はあんたに似たらしい、婆ちゃんが毎回間違える。
野田秀樹も、菊地成孔も、小林信彦も、ドリフも寅さんも全部あんたの本棚にあった。
くそったれ。本当にくそったれ。
くそったれ。
俺はできる。
自信しかない。
お前にできたことは全部できる。
そうに決まってる。
だってあんたにできたんだから。
俺ができないはずがない。
見てろこの野郎。
負けてたまるかくそが。

斯々然々(7/7〜8/7)

怒ってるのか悲しんでるのかブチ上がってるかわからない。汗が垂れて蝉が聞こえて、いつもより煙草が煙くて苦い喫煙所で、何を言っているかわからない黒人のラップをずっと聴いている。
バックバンドはクールにビートキープ
Hot & Cool
激辛チキンとジンジャエール
汗と煙
試験勉強と缶チューハイ
短パンとジャケット
お前の部屋で消火器ぶっ放してやろうか
Freestyleなんて嘘
全部予定と締め切りが支配する
総武線の悪臭とババアの化粧
新小岩へ、有人在来線爆弾が走る
シンゴジラめ。早稲田を踏み潰してくれ。

Freestyle

Freestyle

  • Steve Coleman & Metrics
  • ジャズ

好きなもの以外はクソくだらねえつまらねえと思っても、問題なく過ごせる。
そう思いつつ、大切なものが増えている。

今年も野音で夏を楽しむとEGO-WRAPPIN'に約束してきた。
冷房の壊れた倒れこみそうなMARZで、自分の大学生活が始まった日のことを思い出した。CRCK/LCKSがきっかけだった。
今はもう、終わる日が見えている。
サークルの引退がちらついてから、何かが焦げ付いて止まってしまう不安がずっとある。
知識も熱量もプライドもそろそろ時間切れになる。
夏が始まってしまった。

***

ぼんやりした夜。
期末試験期間、ファミレスに向かう。
ファミレスで一夜漬けをするか、ファミレスで生まれた東京03のネタの台本をひたすら書き起こすことで、東京03のネタをファミレスに帰すか、どっちが重要かを考えながら歩く。人様のネタを放流して初めて、ファミレスは知識を与えてくれる。
結局、五月から終日全面禁煙という張り紙から逃げるように池袋まで行く。
伯爵は24時間営業なんだぜ。
日曜だけは23時閉店だったぜ。
それはただの気分さ。

夜の終わりに その頂上で腰を下ろして
弱り切った声で 話を聞かせて
想い忘れたことがあったから
みんなからの哀しい御厚意に疲れたから
君の一番疲れた顔が見たい
誰にも空いたくない顔のそばにいたい
それはただの気分さ それはただの想いさ
それはただの気分さ それはただの想いさ

6分半で歌詞はこれだけ。
夜になってもお湯に薄皮を張ったような埼京線のホーム。イヤホンから流れる音が体の浸透圧を下げる、夜が溶ける。
向かいのホームに安藤サクラがいた。
やばい、ポカリ飲まなきゃ。
いや、あれはイオンウォーター

暑い夜は鉄板を囲め。
月島もんじゃロード
蒸した空気も鉄板で焼いて、ヘラで少しずつ口に運ぶ。汗をかいた分ビールを飲む。

***

leave me alone
女。漢字でくノ一、ネオンの下のナオン、お茶割りを飲むねーちゃん。台所でタバコを吸うのも、切れた歯磨き粉を買いに行くのも、ステージで歌を歌うことも、全ては生活の延長で、だけど光を帯びる瞬間はいつも魅力的だ。

f:id:ray887:20180808165843j:image
言葉で形容すべきものと、形容されたいものがあるように。ただの形容詞に過ぎない時がある。
まあ強いて言うなら。
華々しい、か、華らしい。

you've got a strange effect on me
And I like it

This Strange Effect

This Strange Effect

  • The Shacks
  • ヴォーカル
  • ¥150

***

二週間という単位がある。
Aマッソ加納のコラムが更新されるのを待つ時間を指す。

ツイッターでユーモアの限界という言葉を見て怖くなった。
日出郎がダウンタウン汁に出た回を見る。
ついでにキャシー塚本のネタを何個か見る。
その再現モノマネを見て一人冷房の効いた部屋で唸る。
ゴットタンの川島スリーを見る。
先週の放送でナイチンゲールダンスというコンビを知った。さっさとテレビに出て欲しい。

ヤスはORANGE RANGEが好きらしい
四千頭身SCANDALが好きだ
杉咲花はしゃべくり007のラジオDJコントでサラバーズを選曲していた。
マジ歌ライブに行きましたとmiwaがNHKでニコニコ答えていた。

それを下北沢のラーメン屋で見ていた。

ライブの帰りで、頭は働いてなかった。
やりたいことを、ちゃんとできて、すごい。
こんなちゃんとしたものを。すごい。
三年ぶりに話したあの人はそう言ってくれた。でも、あなたに言ってもらいたいのはそうじゃない。と思った2秒後くらいに自分のこの人への気持ちはかなり歪なんだと思って、そこからしばらく宙に浮いた気持ちになった。
その人のおかげ、という思いが強すぎる人と距離が縮まることはない。自分の気持ちを考えて、どんな口調どんな文章でそれを伝えるか。無意識な手本であり続けていた人。
夢が叶う、と形容をしていいことではあると思う。でも、事実だけらしい。満足できるほど、ガキではなかったようだ。

***

sugAA

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  • Tohji
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200

何を言ってるかが分かる。
そしてなんでかやっぱり、何を言ってるかが分かる。何語なのかということじゃない。育った環境は大きいのかもしれないと、もしかしたら初めて、思った。

面白いかつまらないか。かっこいいかダサいか。満足か不満か。それ以外は関係ない。それが分かってねえ奴らに限ってたくさん喋る。

これは間違っていますか。
自分の価値はどこにあるんだろう。
世界を肯定しようとする強さはどれだけ大切なんだろう。

自分を好きだと言ってくれる人がいる。
自分を嫌いだと言ってくれる人はいない。
馬鹿だろうが阿呆だろうが惨めだろうがいいと思うのは諦めですか。それじゃダメですか。
それは違う、俺はそんなことはしない、お前が変われ。そんな尺度を持って安心しているのは悲しいことですか。
すごいね、と言われて胸が詰まるのは自分が弱いからですか。


今年もバナナマンライブには行けなかった。バナナムーンも聴かなくなった。
"夏"というコントを見る。

「あの夏の日、僕たちは計画を変更して大人になることを決意した」
設楽さんのナレーションで暗転する。
田舎のガキの、夏休みのコント。

念のため短くしてみた前髪は、インターンに応募するどころか証明写真すら取らないまま、もとあったところまで伸びた。

計画も変更も決意もないまま

夏休み。台無しの誕生日パーティー

22歳になった。

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